クニマスの養殖への期待と可能性

実家に帰ってきました。しばらくは失業保険で生きます。

受給中に、やった方がいいなと思うことを実践していくことになります。まずは就職を目指すというより、貯金を使いながら起業を考えてみます。

これからは行動が大事ですね。その一つとして、考えたアイデアをここで吐き出そうと思いました。で、今日はクニマスについて軽く調べたので、まとめ&吐き出しです。

 

クニマス発見の経緯

クニマス秋田県田沢湖に生息していた固有種です。

結構おいしいようで、結婚式で食べられるような高級魚でもあったようです。

ただ、戦時(1940年)に玉川の強酸性の水を田沢湖に流し込んだことより絶滅しました。

クニマスとよく似た魚にヒメマスがいますが、ヒメマスも酸性度に敏感です。クニマスにとっちゃえらいこっちゃだったようで1年後には全く獲れなくなっていたようです。

田沢湖観光協会クニマスの発見に懸賞金500万円を提示していました。しかし見つからず。

で、そのクニマスが2010年に山梨県西湖でさかなクンさんと京都大の中坊徹次先生により発見され、大きな話題となりました。

 

水産庁/5 クニマスから生物多様性を考える

 

西湖のクニマス発見者の一人さかなクンによるイラスト

水産庁HPより、さかなくんさんによるありがたいクニマスのイラスト

 

実は西湖には1935年にクニマスの卵10万粒が放流される移植実験が行われておりまして、これが繁殖した結果、定着したと考えられています。

産卵時期や形態的特徴を踏まえクニマスであると考えられているようですが、クニマスが本当にクニマスであるかは若干議論の余地はある模様です。

今の時代、同定となればDNA鑑定が強力な手法でしょうが、田沢湖クニマス由来のDNAを取れるサンプルが見つかっていないため同定が難しいのでしょう。ウロコの1枚でもあれば可能なんですがね。乾燥させたクニマスが入ってた箱に落ちてる粉とかでも見つかるかもしれませんが・・・。

さておきクニマス発見を受けて、秋田県仙北市ではクニマス里帰りプロジェクトを始動させており、2017年の6月にクニマス未来館をオープンさせる予定だそうです。

今後クニマスの完全養殖を目指して動くらしいです。

 

で、私もクニマス養殖について興味があったので、調べてみました。

 

クニマス養殖の現状

クニマスの養殖は山梨県の水産技術センターが挑戦しているようです。ざっくり調べた限り、以下の流れです。

・ヒメマスとほぼ同じ飼い方で飼えそうなのがわかったし、人工授精にも成功。

・2012年に人工授精で700匹を孵化させた。

・3年目(2015年)でヒメマスが90%以上成熟するのに対して、クニマスは5%だった。2012年にふ化させた700匹も病気で死ぬなどして残るは約100匹。(一部は試食されているんじゃないかなと邪推)

・西湖に住むクニマスの数は2014年時点で約4000匹と推定

ざっくりいうとこんなところです。つまり、水槽で安定した飼い方と繁殖方法が確立していない現状です。

 

追加で最新の報告によれば

www.uty.co.jp

"去年、県水産技術センターが人工養殖に向け、この第1世代同士の4匹で授精を行いましたが、309個の卵からふ化した第2世代はわずか2匹だけでした。 人工養殖でヒメマスがふ化する割合は80%であるのに対し、人工養殖でのクニマスのふ化する割合は、これまでの試験で1%未満と極端に低くなっています。"

とあります。どうして人口養殖の孵化率が悪いのか、今後詳しく検討する必要があるでしょう。いずれにせよ問題だらけで、養殖方法は確立するのに最速であと10年はかかりそうです。

 

クニマス養殖への道

というわけで今後どうやって養殖方法を確立するか考えてみました。

まず、西湖に卵10万個を放流したという時点で1935年にクニマスの養殖手法はある程度確立できていた可能性があります。

asahi.com(朝日新聞社):クニマスの地元・田沢湖、深い喜び 70年ぶり再発見 - 環境

調べると、田沢湖孵化場と西湖村漁協との間に1935年にはがきのやり取りがあったようです。

サーモンミュージアム(鮭のバーチャル博物館)|マルハニチロ株式会社

マルハニチロのHPより、田沢湖孵化場の写真

HPからの引用ですが、"田沢湖・春山にあったふ化場。規模は小さいが、管理小屋、ふ化場、水路、稚魚池などが配置されている。(「クニマス百科」より)"

少なくとも田沢湖孵化場で卵から孵化して稚魚まで育てることはできていたようですね。つまり、昔どんな方法とってたのか徹底的に調べるのが第一です。1935年ということは、現在生きている人で養殖場に携わっていた人がぎりぎりいるかもしれません。今のうち聞きこみ調査するのは大事ですね。当然やってるのだろうとは思いますが不明です。

 

次にどうやって卵を得るかです。一番お手軽なのは成魚クニマスが交尾、産卵する条件を見つけることでしょう。しかしこれ、苦戦中。3年後に700匹中100匹しか生き残らなかったことから生育条件が確立できていないと言わざるをえません。よって人工的に飼う場合、数匹単位で温度から餌、その他刺激など飼育条件を分けて飼う必要があると思います。各飼育条件において、評価項目は寿命、成長速度と体長、性徴がみられるまでの期間、未受精卵と精子の数ですかね。そして、これらの検討は山梨県の水産技術センターだけで行うには限界があります。おそらく複数の条件は試したくても、設備上限界があるのではないかと思います。秋田県も積極的に養殖方法の確立に協力していくべきだと思います。

生物工学の技術を使うのもアリです。ただ未だに精子の保存はできても魚類の未授精卵、受精卵の長期保存法は確立されておりません。しかし卵母細胞ぐらいは凍結保存しておくと、後でヒメマスか何かに移植して卵だけはクニマスのものを産ませるように出来るかも知れません。もうあるかもしれませんがね。ともかく細胞をiPS化して分化させることも期待できますし、細胞は凍結保存しておくと良いでしょう。特に、一種類だけではなく複数のクニマスの細胞を保存しておいて、遺伝的多様性を確保しておくことが重要だと思います。

 

クニマスが飼えるかもしれない場所でいきなり稚魚放流から検討するのもよいと思います。人工的に成体まで飼えない可能性があるためです。人工栽培に成功していないマツタケのようなものだと考えて頂ければと。ではどこで?となりますが、まず最初に浮かぶのは当然ながら田沢湖です。田沢湖で同様の設備を作れば孵化から稚魚までは出来るかもしれません。しかし、問題は絶滅の原因にもなりました酸性化の影響でしょう。クニマスは現状田沢湖の水の中で生育可能なのか、田沢湖に十分なエサがあるのかは今後調査が必要です。まあそういうの抜きで放流して繁殖成功したらオッケーなんですけどね。

田沢湖以外で飼えるとしたら、秋田県内だとまず十和田湖が浮かびます。理由はヒメマスが飼えるためです。十和田湖もヒメマス養殖に苦心した歴史があるようです。知りたい方はぐぐってみてください。この場合鍵を握るのは十和田増殖漁業協同組合でしょうか。十和田湖へのクニマスの放流もいずれ予想できる事業です。

田沢湖に流れる川のうち、玉川と合流していない川の上流にクニマス繁殖用の池を作って繁殖試験を行うのも手だと思います。ヒメマスを実際に人工池を作って養殖している業者も北海道にいます。詳しくは以下のURLをどうぞ。

チップ(ヒメマス)専門店の野村商店(野村養殖場)へようこそ

実際北海道で試したほうが早い可能性もありますが、秋田県クニマスを戻そうというプロジェクトですので、北海道での可能性はここでは詳しく言及しません。

 

以上のような試行を行ううちに、養殖成功に繋がると思います。

ただ、クニマスは5年生きる魚だそうなので、最低2世代(F2まで)飼うことを考えると約10年掛かりの事業になります。最速で10年後に一般の人でも(おそらく高級魚ですがなんとか)クニマスが食べられるようになると思います。

 

定着後の予測

クニマスは美味とされる魚であります。ということは、名産になります。がゆえに山梨の水産技術センターでも養殖法の確立に力を入れているわけです。しかしもともと秋田にだけ生息していた魚ですので、秋田県の名産にもなるでしょう。

クニマスは日本にしかいない魚です。そして美味ならば、世界に対抗できる名産品となります。ゆくゆくはノルウェーのトラウトサーモンのごとく養殖されるようになるかもしれません。そうすると市場規模は数百億になることが期待できます。その第一歩として、秋田県は積極的にクニマス養殖に関係していくべきだと思います。

 

最後に…

さて、なんだかんだ執筆してきましたが、要するに何が言いたいかと言うと、クニマスを食べてみたいってことです

個人的に育成を手伝えるならやってみたい気はありますね。今後クニマス養殖には注目していきたいと考えています。

以上、クニマスの可能性についてでした。